顔面輪郭形成術頬骨削りの整形手術
頬骨に関する学会発表
2018年10月
|
第41回日本美容外科学会総会 教育講演3 顔面輪郭形成「顔面輪郭形成術を成功させるために」 |
---|---|
2017年11月
|
第35回日本頭蓋顎顔面外科学会学術集会「下歯槽神経に配慮した術式の選択」 |
2017年4月
|
第60回日本形成外科学会総会「下顎Vライン形成におけるオトガイ部ホームベース骨切り術の有用性」 |
2015年 6月
|
第103回日本美容外科学会「典型的な美人顔を創造する」 |
2011年 6月
|
GID学会 第13回研究大会 シンポジウム -GIDの外科療法について-「GID患者における顔面輪郭形成術」 |
2009年 4月
|
第52回日本形成外科学会総会 モーニングセミナー招待講演「顔面輪郭形成術を成功させるコツ」 |
2008年 5月
|
第94回日本美容外科学会 教育講演【顔面骨の美容外科】「顔面輪郭形成術における単独・複合手術の適応とpitfall」 |
2007年 4月
|
第50回日本形成外科学会総会「輪郭形成術における単独手術・複合手術の適応」 |
頬骨の骨切り術では何が改善されるのか?
頬骨縮小術は技術的には難しいのですが、一方で効果を出すという観点では他の部位の骨切り手術と比較して安定しているのが特徴です。その理由は下顎骨のように神経に制限されることなく、手術計画通りのデザインで骨切りができ、さらに骨を正確に固定することにより手術前に計画した結果を導くことができるからです。
国際的に行われている方法は、頬骨の体部(ストレート、L型)と頬骨弓の後方の2ヶ所で骨切りして、内方転位(infracture)させるものです。その際骨の固定法、耳前部での切開位置などは、結果を左右する重要な要因です。整形手術の際に使う器具によって、頬骨削りの方向が限定されますので自ずと結果に影響を与えます。
術式と同様に重要なのが、術者(医師側)のフィロソフィー(哲学)であり、どのような頬骨形態が美しいのか?患者様とともに目指す方向性が問題となります。外科医側のゴール設定が違えば手術後の患者様の顔貌は大きく異なってきます。
効果的な頬骨骨切り術のコツ
頬骨は体部と弓部の2ヶ所で骨切りした後、内側に骨を移動して強固に固定(チタンプレート使用)することにより大幅な縮小効果が得られます。頬部の前方への突出、顔面横幅を狭くするなど骨の移動方向は自由に調節できます。
顎関節前方部での骨切り、骨固定の重要性
韓国のドクターからの発表で、もみあげの後方に小さい切開をして、ノミなどで頬骨弓を骨切り、落とし込みを行うという報告があります。この方法では骨の固定を行っておりません。口腔内から頬骨体部の骨切りを行い、そこだけの固定では頬骨弓が逆に外にはねてしまい耳前部で突出が目立つという合併症がおこります。したがって耳前部でもしっかり骨固定をすべきです。
切開線を短くする代償として、このような合併症がおこりえます。さらに言いますと、耳前部で頬骨弓を固定しない場合には、もみあげ周辺での頬骨弓最突出部位は内側に落ち込むことはなく、顔面の最大横幅はほとんど変わらないと結果になります。
超音波骨切り器(ピエゾ)の使用
頬骨弓の骨固定で大事なのは骨切り方向です。顎関節の前方は骨が厚く、捻じれた形態であるため、それよりもさらに前方で骨切りを行うことが多いようですが、それで内方転位させると強い段差ができてしまいます。その段差をなくそうと後方の側頭骨を削骨してしまうと、皮質骨がなくなり、スクリューが効かなくなり、固定ができなくなるというジレンマがあります。
私の頬骨削りはピエゾを使用すること、耳の輪郭に沿ったS状切開をして直視下に確認すること、さらにピエゾの先端が自由な方向に動かせることから分割しながら骨切りを行えます。これにより骨片間に距離的な余裕ができ、骨を上方(頭側)に移動させながら、内側に移動させることができます。
ヒロヒ式の特徴
- 中顔面の横幅を大幅に狭くできます。頬骨弓の顎関節前方での骨切りでは、ピエゾ(超音波骨切り器)を使用しています。繊細な分割骨切りであり、その後の骨固定が容易になります。耳前部より直視下に頬骨弓を内方に転位させ、ロッキングスクリューで強固な固定を行います。これにより術後に後戻りすることがありません。
- 頬部に弛みを生じません。頬骨骨切り後に、いったん切り離した後に元の位置よりも上方(頭側)に引き上げて、骨を固定します。頬の筋肉はたるむことなく、むしろ引き上げ効果があります。咬筋を中心とした頬骨に付着している筋肉が内側、下方に引っ張られると頬に弛みを生じます。頬骨弓は頬のたるみ防止のために、頭側に移動させ、強固な固定が必要です。
- 頬骨弓から筋肉を剥離しないため、術後の腫れは最小限です。また顔面神経(側頭枝)の損傷、麻痺の可能性はありません。
解剖
頬骨
頬骨は頬部の骨格の主体をなし、前頭骨、側頭骨、上顎骨と縫合する骨です。頬骨は頬骨弓前半部と眼窩外側壁ないし下壁の一部を作る一対の骨でほぼ菱形を示します。
- 頬骨弓に関与する部分は、その先端が側頭骨の接するため側頭突起と呼ばれます。
- 眼窩の外側壁を作る部分はその上方が前頭骨と結合するので前頭突起と呼ばれます。
- 上顎骨頬骨突起と結合し、眼窩を形成する部分は上顎突起と呼ばれます。
頬骨弓
頬骨弓は、その前半部が頬骨、後半部が側頭骨で構成れます。その中間部で斜めに走行する両骨の境界(側頭頬骨縫合)が見られます。頬骨弓の形や張り出し具合が顔面形態(顔の横幅)に大きく影響します。
- 頬骨弓の上縁は平坦な刃のようで、耳眼平面(FH plane)とほぼ一致します。下縁は曲折していることが多いのですが、この理由は頬骨から頬骨弓前半は太く強大であり、側頭骨からなる弓の後半部は細いことによります。
- 頬骨弓の前2/3の下縁と内面からは、咀嚼筋の一つである咬筋が起こります。また頬骨弓上縁には側頭筋の筋膜が付くので、頬骨弓は咀嚼機能と密接に関係していることになります。
頬骨は、前頭骨、側頭骨、上顎骨と縫合する骨ですから、周囲骨とのバランスを考えたうえで手術計画を立てることになります。顔貌上では、頬骨弓の内側転位を行う場合には、こめかみ、頬部(エラ)とのバランスが重要です。理想的には卵形の顔型ですが、デザインを無視した手術を行いますと、不自然な顔貌(ひょうたん型、しもぶくれ型)になります。手術計画で何ミリの減量をどの方向に行うのか、周囲組織との相対的評価で計画することが整形手術を成功に導く鍵となります。