小顔手術としてのIVRO

下顎枝垂直骨切り術(IVRO:Intraoral Vertical Ramus Osteotomy)

顔面下1/3を小さくすることにより、卵形ないしは逆三角形型の美しく小さな顔面輪郭となります。
そのためにはどのような方法があるか、一般的な美容外科クリニックでは行われていない効果的な方法を解説します。手術法としては、エラ、オトガイ(あご)の骨切り、骨削りが行われます。これらの手術で十分小顔に変身しますが、下顎骨の中を走行している下歯槽神経の位置により、小顔効果は制限されてしまします。「顎(オトガイ)でもなく、エラでもなく下顎全体が大きいと感じている」方は少なくはありません。またエラの手術は行ったのだけれど、もう少し小さくならないかな?と思っている方もおります。そこで究極の下顎骨縮小術として、下顎枝で垂直方向(縦方向)に骨切りを行って、下顎体部を切り離して後方に下げる下顎枝垂直骨切り術(IVRO)について詳述します。

下後枝垂直骨切り術は、もともとは下顎前突の患者さんの治療として位置づけられています。本手術後には反対咬合の噛み合わせの改善、顔貌の改善(しゃくれ顔の改善)が得られます。そして決まって小顔になります。本法を下顎前突だけではなく、通常の小顔手術として、美容手術として、考えてみます。もともと咬合に問題がない方では、手術後には相対的な出っ歯(上顎前突)となります。その場合には、上顎も同時に手術を行うのか?上顎は歯科矯正で治療するのか?あるいはそれほど出っ歯が目立たないのか?術前より検討する必要があります。

上顎の歯列弓が下顎の歯列弓より前に出ている(オーバージェット)状態の方は決して少なくはありません。噛み合わせの大きな問題は臼歯部(奥歯)にありますので、このあたりは手術前に精査しておく必要があります。いずれにせよ、歯科的な治療を要する可能性はありますが、下顎枝垂直骨切り術は下顔面1/3を劇的に小さくする効果的な手術法であることは間違いありません。

下顎枝を下顎切痕から下顎角に向かって垂直方向に離断する下顎枝垂直骨切り術(IVRO)は、Caldwell&Letterman(1954)により口外法として報告されています。Winstanley(1968)は口腔内からのアプローチとして外科用バーを用いた方法を、Herbert(1970)はオシレーティングソーを用いた手術術式を発表しました。さらにHallにより手術術式が改良され、顎間ゴムの使用などによる後療法が確立されたことから優れた術後の安定性が得られるようになりました。IVROは、顎関節機能異常に対して有用であること、オトガイ神経麻痺などの知覚異常の出現がほとんどないこと、など今日では世界中で広く用いられてきています。私のクリニックでも、小顔形成術として下顎全体の後退を目的とする際には、下顎枝矢状分割法(SSRO)ではなく、この手術方法を第一選択にして行っています。本法は手術術式が単純で容易ですが、適切な手術操作が行われない場合、また後療法が不十分な場合には合併症を引き起こす可能性があります。

IVROの特徴

本術式の利点は、術後に下歯槽神経症状がほぼ出現しないことです。とりわけ私の行っているテンプレートによる垂直骨切り法では下歯槽神経の麻痺の可能性はほとんどないと言えますまたIVROは、下顎非対称症例に有用です。

一方、欠点としては骨切り後の骨片間の固定をしないため、術後に顎間ゴム牽引が必要となりますが、1~3ヶ月間顎間ゴムを使用することで、術後に良好な咬合状態を獲得することができます。

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