顎矯正手術 顎矯正手術面長、中顔面短縮、ガミースマイル
局所麻酔
両側の上顎結節部および骨膜剥離部、大口蓋孔部および硬口蓋後縁軟組織部に10万倍アドレナリン添加0.5%リドカインで浸潤麻酔を行います。
粘膜切開
口腔前庭部の粘膜切開は歯肉頬移行部より数mm上方に設定します。初めは粘膜面に対してメスの角度を直角になるようにメスの角度を変え骨膜を切離します。大臼歯部では頬筋を切離すると頬脂肪体の脱出が起こるため、粘膜切開は第1大臼歯近心までに止めるようにします。
粘膜剥離
鼻腔底部の剥離は、鼻腔底の形態を考えて、剥離子の先端が常に触れていることを意識しながら操作します。口蓋骨の後縁に達すれば、骨の抵抗感がなくなった感触が手に伝わってきます。鼻腔底部の剥離は、鼻中隔の切離の際に鼻腔粘膜を損傷しないようにできるだけ広く行います。
上顎洞前壁の剥離は、プレート固定部を想定して、骨切り予定線よりやや広めに剥離します。剥離操作を遠心に進め、上顎骨頬骨突起の基部を確認したのち、上顎結節部の剥離を行い、翼突上顎縫合部を確認します。先が少しカーブになった耳鼻科用粘膜剥離子やフリューエル剥離子を用いると便利です。
骨膜下でトンネル状の操作となるため、盲目的になるが剥離子の先端で確実に翼突上顎縫合部を確認します。翼突上顎縫合部が確認できればその部分に上曲りのリトラクターを挿入し、創部を展開し、ボスミンガーゼを挿入しておきます。
骨切り線のデザインと骨切り
歯根尖より5mm離れた骨上に骨切りの予定線をデザインします。予定骨切り線上に交わるリファレンスマークを印記しておき、移動後の目安とします。レシプロケーティングソーを用いて梨状口縁から、鼻腔側壁、上顎洞前壁、上顎結節部、翼突上顎縫合部まで骨切りを行います。上顎骨後方部の骨切りは使用する器具の長さを把握しておき、深部まで切離しないように注意します。
翼突上顎縫合部を上曲りのリトラクターで確実に保護し、鼻腔側壁部では鼻腔粘膜の保護のために鼻腔側にマレアブルリトラクターを挿入し、骨切りを行います。
鼻腔側壁の後方は3次元実体モデルより梨状口縁から下行口蓋管までの距離を計測しておき(約30mmを目安)、下行口蓋動脈を損傷しないように薄刃のノミで鼻腔側壁を切離します。実体模型より下行口蓋動脈までの距離を測定し、あらかじめノミにテープで印しをつけておくと、安全な骨切りが行えます。
最後に鼻中隔マイセルにて鼻中隔を切離しますが、手掌による槌打で切離が可能です。
ダウンフラクチャー
骨切りが終了すれば、翼突上顎縫合部の分離を行います。縫合部の分離は一般的にはプテリゴイドオステオトームを用いて行いますが、出血のリスクを避けるために、私は最低限のスリットを入れた後は下記の手技で行っています。
梨状口縁の骨切り部にボーンセパレーターを使用します。ゆっくりと骨切り部を開大させ、対側にもセパレーターを挿入します。骨の抵抗感を手で感じながらセパレーターを開大していきますが、抵抗が強い場合には再度骨切り状態を確認すべきです。次に、頬骨下稜部にセパレーターを移動させ左右同じ力でダウンフラクチャーをさせます。その際のセパレーターの力の方向が上顎結節部を下方に押し下げるように、左右同じ力でセパレーターを操作することがコツです。
馬蹄形骨切り
馬蹄形骨切りの予定線を横切る下鼻道側壁と鼻中隔部を大きめのラウンドバーで削骨して、骨稜を低くします。その後は小さめのラウンドバーで鼻腔側の皮質骨のみを骨きり予定線に沿って、切削します。
最後にピエゾ(超音波骨メス)を用いて、口蓋粘膜への穿孔を避けながら骨切りを続行します。骨切り終了後は、上方に挙上された口蓋骨片は、最終的に歯列骨片の下に入り込まなければならないため、干渉部はラウンドバーでさらに削骨しておきます。
歯列を大きく上方移動させるため、歯列骨片の口蓋側の骨膜を剥離して、口蓋骨片が無理なく歯列骨片の下に移動できるようにします。
上顎結節の干渉部位の削骨
後方へ移動させる場合には、口蓋骨片の前方部と上顎結節部の削骨が必要です。この方法では、上顎結節部の削骨に際して、下行口蓋動脈を含む口蓋骨片と上顎結節の間にマレアブルリトラクターを挿入して、下行口蓋動脈を確実に保護することで第2大臼歯の付近まで安全に骨削除が行えます。
上顎骨の位置決め
上顎骨骨片が術前に想定した移動方向に抵抗なく動くことを確認したのち、上顎骨の位置を決定します。術前のモデルサージェリーより作製したスプリントを装着し、下顎位を基準に上顎骨を移動させることになります。
骨片の固定・縫合
骨片の固定は梨状口縁部、頬骨下稜部に上顎用のチタンミニプレートにて左右4ヶ所で固定します。
鼻翼基部の引き締め
口腔前庭切開では鼻筋、口唇の筋肉が切離されるため、鼻翼の広がりを防止するために左右の鼻筋および上唇鼻翼挙筋に4-0バイクリル糸をかけて、Alar base cinch sutureを行います。
創閉鎖
最後にペンローズドレーンを術後の腫脹防止のため留置し、唇側、口蓋側の粘膜を縫合して手術を終了します。ドレーンは翌日に除去します。