額(おでこ)増大1の整形手術
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2018.03.16
院長広比の投稿した額の形成に関する論文『Integrated Forehead and Temporal Augmentation Using 3D Printing-Assisited Methyl Methacrylate Implants.』がアメリカ美容外科学会の公式ジャーナルである『Aesthetic Surgery Journal』に掲載されました。
前頭部Augmentation-骨セメント法
美容外科患者様の細かな要望を満足させる人工材料としては、精密に加工できるメタクリル酸メチル樹脂がもっとも優れた材料と考えます。患者様の実際の愁訴はただ単に額を出したいというだけにとどまらず、弯曲の程度にこだわり、眉毛部の隆起をつくることにより彫りの深い西洋人顔になりたい、など複雑な要望が多いからです。ハイドロキシアパタイトでは、細工のしにくさ(3分以内に硬化してしまう)のため、このような細部にこだわるデザインの要望には対応できません。
綺麗な額をつくるためのコツは?
メタクリル酸メチルで突出させる程度は最大で3~10mm程度です。突出量が大きいほど手術の難易度は増します。というのは最大突出部位から周囲にかけて徐々にグラデーションをかけていくわけですが、段差を残さずに額を形成するためには、広範囲にインプラントを作製しなければなりません。
突出度合いが大きければ、後方は生え際から頭髪内を頭頂部に近いところまでメタクリル・インプラントをつくることもあります。側頭はこめかみにもインプラントを入れる必要があります。おでこだけを突出させると、こめかみのくぼみがかえって目立ってしまうからです。
患者様の中には西洋人の写真を持ってきて、「このような彫りの深い額にしてください」と希望される患者様が少なからず存在します。そもそも西洋人と東洋人では頭蓋骨骨格が異なりますので、西洋人並みの額を形成した場合には、おでこだけが目立ってしまい、決して美しい額とは言い難いことが少なくありません。西洋人と異なり、東洋人では額の横幅が広いため突出量を増やすと、かなり強調され過ぎることがあります。
手術のゴールとして、患者様の希望イメージとしての‟西洋人のような額“というのは重要です。
一方、現実の手術では額を突出させるインプラント挿入術では、大きな変化を求めるのではなく、患者様の頭蓋骨形態に合わせた、無理のない自然な形態にこだわるのが成功のコツです。眉毛のレベル(眼窩上縁)で5mm突出させれば、目元はかなり彫りが深くなりますので、印象は大きく変化させることができます。
メタクリル酸メチルによるインプラント作製(カスタムメイド)
本手術では、挿入するインプラントの形態で手術結果の8~9割の出来が左右されてしまいます。挿入するインプラントは、術者であり、患者様に直接希望をお伺いしている私自身が作成します。通常は手術の3日ほど前に、患者様の計測データを基に作成することになります。
材料としてCTデータから作成した患者様の頭蓋骨の等身大の3次元模型が必要です。CT3次元データより軟部組織の3D画像を出しながら、左右差などを整えていくことも重要です。メタクリル酸メチル樹脂によるインプラント作製には通常2~3時間要します。
ヒロヒ法の特徴
手術前準備:挿入するインプラントを精密に作製
患者様の額に挿入するメタクリル・インプラントは手術の3日前までに私自身の手で製作します。外来・診察の際に、患者様の額の左右生え際までの広がりの寸法を計測しておきます。またこめかみはどこまで挿入するか、生え際から何センチ頭頂に向かって挿入するかはこの診察の際に決定します。
また骨格以外の情報、すなわち皺眉筋の厚み、左右差、眉毛位置の左右差、眼窩上縁と眉毛位置との関係、鼻に関しては鼻根部形態、ハンプの有無、など周囲組織、とりわけ軟部組織の精査をします。額の形態は必ずしも硬組織である前頭骨の形態によってのみ影響されているわけではなく、筋肉、脂肪などの影響があることがその評価を難しくしているのです。CT画像で軟部組織を描出することで、インプラント作製に役立ちます。
術前検査としてCT撮影は必須であり、CTデータから3次元実体模型を作製します。この模型は患者様の実際の頭蓋骨と等大で作成されます。秀逸なのは、頭蓋骨以外にも筋肉も表現できますので、額形成に関しては、側頭筋も重要なパートになりますので付加してもらいます。
この模型上で患者さまの希望される形状のカスタムメイドのインプラント(人工骨:メタクリル酸メチル)を製作します。この段階が本手術で最も重要な段階です。このインプラント作製にはさまざまなコツを要します。
樹脂片のデザインは術前のセファロ側面像とコンピュータシミュレーションを参考にします。厚みに関しては、セファロ上に患者様の希望される理想の額形態(コンピュータ・シミュレーション)をトレースして重ねて、厚みを計測しますが、もっとも重要なのは眼窩上縁の突出の評価です。
実際の横顔写真、セファロ側面像で、みます。写真上のスケールを基準に額全体における突出量を算出して、基本設計図とします。計測の垂直方向の基準は眼窩上縁からの距離で行っています。但し横顔データはあくまで2次元の表現ですので、額の中心部での増大量だけを反映しているものです。
いよいよ頭蓋骨模型上で挿入するインプラント樹脂(カスタムメイド)を作製します。はじめに患者様の実際の顔面を計測した際のデータとして、挿入すべきインプラントの上下・左右の広がりをマーキングします。上方は眼窩上縁から生え際に入り、頭頂部に向い3~8cm程毛髪内まで入れることになります。模型上で額正中に鼻根部から頭髪生え際を超える範囲で、ポイントを1cm刻みで6~7ヵ所、設計図に合わせてスクリューを打っていきます。スクリューの高さが増大量となります。
ここで樹脂剤の準備を始めます。当院ではCodman CRANIOPLASTIC™(Codman&Shurtleff Inc. RAYNHAM.MA USA)を用いています。これは頭蓋骨修復用として開発された樹脂剤であり、主成分はメタクリル酸メチルです。CRANIOPLASCTIC™は付属のパウダーと液体とを混入撹拌し5分ほどである程度粘着性が出てきた時点で頭蓋骨模型上に塗布していきます。
その際に額中央部で打ち込まれたスクリューを基準に厚みを合わせていき、上下左右ともになだらかにグラデーションをつけていきながら硬化するのを待ちます。硬化してからでも削れるのですが、できればその約10分間で可及的に完成形に近い樹脂片を作製する様にします。
10分経過して樹脂が硬化すればスクリューを抜きながら頭蓋骨模型より取り外しが可能です。ラウンドバーにて辺縁を中心に段差ができないように薄く、なだらかに削っていきますが、その際左右差、厚さの確認が重要です。最後にサンドペーパーをかけて仕上げます。模型にかぶせたり、取り外したりを繰り返して、完璧なインプラントを作製します。このような作業をしますと通常3時間かかってしまうわけです。