オトガイ(あご)・顎削り前進(顎を前に出す)の整形手術
後退している顎を前に出すには?
後退している顎を前方に出すには、骨切りを専門としていないクリニックなどでは、シリコン・インプラントなどの人工物を使う方法が一般的です。シリコン以外の人工物としては、ハイドロキシアパタイト、メタクリル酸メチルが使用できます。
シリコンで顎を前方に出す場合には術後には, 正面顔ではあご先は長く見えます。手術前にアゴの長さ(オトガイ高)が35mmを超えるような場合には、あご先が引っ込んでいるからといって、シリコンを入れるとにアゴが長く見えるため、要注意です。
オトガイは後退していると、正面顔では短く見えますので、実寸を計測したうえで手術計画を立てないと、希望通りのアゴのラインにはなりません。
私の基準は、術前のオトガイ高が、女性で35㎜以内であれば骨切り術、インプラント挿入術、どちらでも可能です。一方でオトガイ高が36㎜を超える場合には骨切りを第一選択にしています。
骨切り術
- オトガイ水平骨切り術
- オトガイホームベース型骨切り術
人工物
- シリコンインプラント挿入術
- ハイドロキシアパタイト挿入術
オトガイ水平骨切り術
オトガイが長くて後退している患者様では、水平骨切り術(中抜き)でオトガイ高を短縮しながら前進させる必要があります。この適応を誤ってインプラントを用いると、術後に長さがより強調されるため注意が必要です。
オトガイが後退している患者様では正面からではその長さが見落とされやすいため、必ず横顔での計測をするクセをつけるべきです。またあご先を細くしたい場合には、前進させる骨片を尖がるように細く削ることによって、細いあごを形成することも可能です。
なお骨片を前進させる量としては、骨片の厚みにもよりますが通常は8㎜程度が限界です。これはスライディングさせた骨が接触面で骨癒合に必要な最低限の接触面積を残した場合です。
もし8㎜以上の前進が必要であれば、私は自家骨だけでのオリジナル骨切り術を考案しています。
シリコン・インプラント法
短く後退しているオトガイの場合、前進させることによりオトガイ高が長く見えるため、インプラント法が良い適応となります。シリコン・インプラントによるオトガイ形成は局所麻酔下でも手術を行えるため、また術後の腫れを考えますと患者様にとっては低侵襲な方法です。しかし、インプラントで美しいオトガイを形成するためにはいくつものコツがあります。
術後に問題となるのは以下の2点が多いです。
- インプラントの形態が不自然、
- インプラントの位置が上がっている(頭側偏位)
市販のインプラントの形態は辺縁にグラデーションがなく、そのままの形で使用すると辺縁の段差が目立ち不自然な形態となりやすいため、術者自身で加工する必要があります。私は自身で設計したオリジナルのインプラントをメーカーに作製(オーダーメイド)してもらっているため、辺縁は段差なく骨に移行し、自然な形態となります。
術後に多い形態的な不満に関してですが、インプラントが上方に位置することです。これはドクターの技術に起因することが多く、剥離方法の問題です。口腔前庭切開は2cm以内として、オトガイ下端に向かって扇形に剥離していくことが重要です。さらに下端においては骨膜剥離子から剪刀に持ち替えて骨膜を下顎下縁で切断し、上方への圧力を解除し、インプラントの下端を骨の下端に合わせます。
粘膜切開部から巾広く剥離してしまうとインプラントは必ず上方に移動してしまうため横顔ではで奇異なオトガイ形態となるので注意を要します。インプラントによるオトガイ形成は一見易しそうですが、実はきれいなオトガイ形態を作るのには熟練が必要です。
ハイドロキシアパタイト法
初回手術の方ではシリコン・インプラントを適応するのですが、骨切り手術後の修正手術などの際には、既製のインプラントでは骨に適合しない可能性があります。そのような場合には、ハイドロキシアパタイト法が非常に良い適応となります。
ハイドロキシアパタイトでオトガイを形成する場合には、手術前に3次元実体模型からカスタムメイドで挿入物をあらかじめ作成しておきます。3次元実体模型から、骨にぴったりと合わせたインプラントを作製することができます。