顎矯正手術 下顎前突(受け口)整形手術下顎枝矢状分割法(SSRO)

顎矯正手術 下顎前突(受け口)SSRO

手術前の検査・評価

術前検査は術前の患者さまの全身状態を把握し、特に麻酔をかけて安全に手術が行える状態かを判断するために行う検査です。ここでの安全には、安全に麻酔がかけられるか、安全に手術が行えるかの二つの意味があります。当院での手術を希望される患者さまは、安全な手術を行うために術前検査を受けることが必要になります。

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検査項目

セファロ

骨格的評価としては、標準的にセファロX線写真分析が用いられ、Ricketts, Steiner, McNamara, Downs&Kim, Jarabak, Tweed, Roth法などが用いられます。多くはFH平面やS-N平面を基準とした分析法で、なかでもRicketts分析法は成長予測を含めて骨格系と歯系の関係が分析できるためもっとも広く用いられています。

セファロ分析ソフトは、画面上で計測点を入力することにより基準線や測定値が自動的に設定され、いくつかの分析法を比較検討することが容易です。

CT検査

下顎枝の形態や下顎管の走行を確認して、骨切り線を設定するために最も重要です。CTデータ分析ソフトは術前の3次元的なシミュレーションに有用です。また関節突起の過形成により顎骨の変化と不正咬合を呈している症例もみられるため顎関節の検査も重要で、疑われる症例ではCTやMRI検査を行います。

3次元実体模型 computer-based 3D skull model

3次元実体模型はCTデータから抽出されたデータをもとに、個々の患者様の頭蓋骨と等大で製作されます。下顎枝矢状分割術(SSRO)では、処理したデータをもとにした実物大3次元模型を作成することにより、骨切りラインの設定や骨片の移動、固定法の選択などをより実践的に行います。実体模型から下顎骨の厚み、下歯槽神経走行を確認して、その結果によってはIVRO法を採用することもあります。

SSROでは下歯槽神経損傷の可能性が常にあるですが、3次元模型から下歯槽神経の深さを確認したうえで、外側皮質骨からの距離を把握したうえで分割骨切りをおこなうことにより、可及的に安全に手術を行います。

咬合模型

歯列模型2組を作製します。顎矯正手術では顔貌変化と咬合の改善が前提となっています。手術後に安定咬合が得られない場合には咀嚼筋のバランスは崩れて、顎は元の位置に戻ろうとします。このようなことを予防する意味でも、手術前に歯列模型でモデルサージェリーを行い、術後その位置で安定するシーネ(オクルーザルスプリント)というガイドを作製します。

手術後は、このシーネを咬んでいただいた状態で上下の顎間固定(ゴム)をおこなうわけです。SSROにおいては咬合を含めた手術計画が大変重要です。

その他の手術前検査

SSROの手術は全身麻酔で行われます。安全に麻酔がかけられるように、手術前に検査が必要になります。

血液検査

血液検査

貧血や出血傾向の有無、肝臓や腎臓機能、血糖値、感染症の有無などを調べ、全身麻酔や手術に耐えられるかどうかを調べます。

検査項目

TP、GOT、GPT、γ-GTP、CPK、血Amy、T-cho、TG、GLU、BUN、Na、Cl、K、WBC、RBC、Hb、Ht、PLT、MCV、MCH、MCHC、PT、PT-INR、PT-%血液型、Rh血液型、HBs抗原、HBs抗体、HCV抗体、TP抗体、HIV抗原抗体

貧血、肝機能、腎機能検査、血糖、電解質検査、血液凝固機能検査、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)、血液型(ABO,Rh)不規則抗体、など、麻酔、手術等を安全に実行するための条件に関わるものや、輸血を行う場合の準備、院内感染予防・リスク評価のための検査を行います。

心電図(ECG)

心電図(ECG)

不整脈の有無や種類、心筋虚血(しんきんきょけつ)、心臓肥大、心筋炎などの可能性がわかります。術前検査の一つとして手術を予定されている患者さんの心臓に問題がないかを確認するために行います。

胸部X-P

胸部X-P

胸部にある臓器(主に肺・心臓・大動脈など)、つまり呼吸器と循環器に異常がないかを調べる検査です。胸部全体にX線を照射して平面撮影し、肺に異常な影がないか、心臓の形に異常がないかを調べ手術や麻酔が安全に出来るかどうかを評価します。

血圧測定

血圧測定

術中術後の血圧上昇は出血のリスクを高くするため,周術期管理において安定した血圧を維持することが重要となります。また異常の早期発見や適切な全身状態の管理を行うことを目的とします。

身長・体重

身長・体重

麻酔をかけるための計算を目的とします。

体重から麻酔薬剤などの計算をし、身長から挿管に使う管の長さや、胃に入れる管の長さを想定します。

手術前評価

横顔

側貌において、上・下顎の突出度合いを評価します。セファロ分析も重要な役割を果たします。上顎と下顎とに位置関係において、下顎が相対的に突出傾向にある場合にはSSRO,の良い適応になります。下顎のみではなく上顎も突出気味であれば、上顎に対してLeFort1型骨切り術、ないしは前歯部歯槽骨切り術を同時に施行することを検討します。

SSROでは、あご先(ポゴニオン)から下顎角(エラ)までの距離が短くなりますので、横顔で頬の面積がかなり縮小されます。手術前に横顔の写真を撮らせていただき、コンピュータでシミュレーションを行っています。患者様にも大変わかりやすいと好評です。

正面顔

オトガイの理想的な長さに関しては、鼻下点からオトガイ下端までの長さが女性では70mm(男性では75mm)を平均とし、下口唇(赤唇)下端~オトガイ下端まで女性で35mm、男性では38mmを理想値とします。SSROにて下顎全体をセットバックしますと、オトガイ高は短く見えるようになります。

SSROとオトガイ形成術(短縮術)を同時におこなうかどうか?患者様の要望を伺いながら検討します。

Surgery First(サージェリーファースト)法について

当院では大学病院のように術前歯科矯正は行いません。近年患者様の要望に即して、治療の初期段階で“まず顔貌を変化”させて、コンプレックスを取り除こうという治療計画をおこなう報告が増えています。1991年にBrachvogelが提案し、術前矯正の欠点、不便さを軽減することが目的でした。この治療法はSurgery First(サージェリーファースト)と呼ばれています。

治療の初期、すなわち第一段階で手術が行われ、上下顎を理想的な位置に整復し、その後に矯正治療をおこなうという治療法です。トータルの治療期間が短縮されます。顔貌(軟部組織)のコンプレックスをはじめに解消するため、患者様には治療開始早々に顔貌に満足していただけます。

この治療法は高度なアプローチと多くの経験が必要です。経験豊富な歯科矯正医と顎矯正手術の担当医が緊密に協力し合わなければなりません。矯正歯科医にとって最終咬合の予測は非常に難しいことです。また外科医にとっては、術前プラン(顎骨位置、咬合)に合わせて、1mm以下の精度で骨切り、固定を行わなければなりません。

Surgery first 法の基本原則を有効活用すれば、すべての症例で術前の歯列矯正期間が完全に無くならなくても短縮は出来ます。

下顎前突(受け口)