顎矯正手術 下顎前突(受け口)整形手術下顎枝矢状分割法(SSRO)
総論
下顎枝矢状分割法(SSRO)
下顎枝矢状分割術は、下顎前突症に対しては、下顎歯列弓全体、オトガイ部を後方に移動させる術式です。
Obwegesar(1957)により、口内法として確立された方法です。その後にDal Pont、Hunsuck, Bell, Epkerらによって改良されています。どの方法も骨片分割時に下歯槽神経障害のリスクは残っていますが、国内外で最も一般的に行われている顎矯正手術法です。骨接合法(固定法)は、強固な固定力を持つロッキングプレートが近年開発され、主流になっています。この強固な固定システムは、術後の顎間固定期間を短縮するのに重要な役割を果たしています。
SSROの利点・欠点
SSROの利点
- 下顎骨移動後の両骨片間の接触面積が大きいため骨の癒合が早く行われて、後戻りが少ない
- 下顎骨の移動量、移動方向の許容範囲が大きいため適応範囲が広い。下顎前突症のほかに、小下顎症、下顎非対称、開咬症などに適応できる
- 下顎角部(エラ)の形態の改善が可能である
- 後方移動に際しても抜歯は行わないので、歯数を減じることはない
SSROの欠点
- 術後にオトガイ部皮膚の知覚鈍麻をきたしやすい
- 手術野が深くて狭いため異常骨折などの偶発症をおこす可能性がある
SSROの種類(ヴァリエーション)
Obwegeser原法
外側骨切り線を下顎第二大臼歯の遠心部より下顎角に向けた部位においておこなう方法で、内外側骨片の接触面積は十分に大きいため、極端に大きな下顎の移動を要しない通常の顎変形症のすべてに適応されます。
Obwegeser-Dal Pont法
外側骨切り線を下顎第一大臼歯から垂直に下顎下縁に向かう線に置き、下顎移動後の骨接触面積の増大を得ます。本法は下顎の前方移動を必要とする下顎遠心咬合や小下顎症、無歯顎症例に適応されますが、原法と比較して下歯槽神経が露出される距離は大きくなり、それだけ下歯槽神経を損傷する危険性は増し、術後に下唇の知覚障害をきたしやすくなります。
ObwegeserII法
下顎の後方移動が極度に大きく(たとえば15mmを超える)、かつ上方回転移動を要するような高度の下顎前突症ではII法が適用されます。しかし現在このような症例に対してはtwo jaw surgery(上下顎同時手術)に置き換わっており、本法が行われることはほとんどありません。