顎矯正手術 下顎前突(受け口)整形手術

下顎前突(受け口)

下顎前突症は受け口と呼ばれています。“咬合の異常を伴って、下顎が前方に突出した状態”です。原因としては、突発的なもの、遺伝要因、内分泌異常、巨舌症を伴うものなどです。

主な手術方法に関して

顎矯正手術は、顎変形症に対して正常な咬合関係を確立し、顎顔面形態ならびに咀嚼機能を回復することを目的に施行されます。すべての手術は、口の中の切開から行われますので、顔面皮膚に傷跡を残すことはありません。骨格性下顎前突に対しては、下顎矢状分割法(SSRO)、下顎枝垂直骨切り術(IVRO)、または下顎前方歯槽部骨切り術が行なわれます。

下顎枝矢状分割法(SSRO)

下顎枝矢状分割法(SSRO)

下顎枝矢状分割法は、下顎前突症や下顎後退症ばかりでなく開咬症、下顎左右非対称などさまざまなタイプの顎変形症に適応できます。現在、顎矯正手術の中ではもっとも頻繁に適応されている術式です。1957年のObwegeserの報告以来、Dal Pont(1961) やHunsuck(1968)らにより改良や変法が示されてきました。

これらは主に骨切り線の方向などの違いによるものですが、下顎枝の矢状分割の基本的な手術手順に大きな相違はありません。

下顎枝垂直骨切り術(IVRO)

下顎枝垂直骨切り術(IVRO)

手術自体が簡便であることから、近年多くの施設で行われています。下顎の後方移動症例が良い適応となります。利点としては、オトガイ部の知覚神経障害は出にくいこと、また顎関節症を有する症例に対しては有効です。一方、骨片間の接触面積は狭いため、術後の顎間固定期間は長引く傾向にあります。

私は手術後の下歯槽神経麻痺の確率を少しでも下げるために、下歯槽神経が外側皮質骨の直下の浅いところを走行している症例ではSSROは回避して、積極的に本法を選択しています。また以前に美容外科でエラの手術が行われているような患者様では矢状分割が難しいことが多く、本法を適応します。

更に、下顎前突があるわけではなく、究極の小顔手術としてのMMR法の際には、IVROと下顎骨体部外板切除、咬筋RF凝固療法を併用しています。

下顎前方歯槽部骨切り術

下顎前方歯槽部骨切り術

顎矯正手術としての最初の報告は、1849年Hullihenによる下顎前歯部歯槽骨切り術であり、本術式はその後にHoferやKoleらによって完成されました。歯槽部性下顎前突症に対しては第一選択となります。骨切りによって下顎前歯部を下顎体から遊離させて後方移動、前方移動のみならず拳上や低下を図る手術です。

手術操作が容易であり、顎間固定は必要ないという利点を有しています。骨格性の高度な顎変形症においても、上下顎移動手術と組み合わせて咬合や歯列の微妙な調整をおこなうことができます。

 

下顎前突の分類

下顎前突は、歯槽部性と骨格性に分類されます。

1. 歯槽部性下顎前突

歯科矯正あるいは前方歯槽部骨切り術により治療します。

2. 骨格性下顎前突

骨格性下顎前突症では、上顎前歯の唇側傾斜と下顎前歯の舌側傾斜が強く見られる傾向があります。セファロ側面ではオトガイ正中部の断面形態symphysisが薄くて長い傾向もあります。

治療法として、歯槽部だけではなく、オトガイも後退させる必要があるため、下顎枝垂直骨切り術(IVRO)、あるいは下顎枝矢状分割法(SSRO)により治療します。

下顎前突の分類(Sanborn)

この分類は、上下顎の前後的位置関係を重点的に述べています。実際には顔面高(開咬症例)あるいは顔面非対称の考慮も必要になります。

  1. 上顎は正常範囲内で下顎が強く前突するもの(SNA-SNBディファレンスがマイナスである)
  2. 上顎は正常より後退、下顎は正常範囲内のもの
  3. 上下顎ともに正常範囲内で、下顎がやや前突して反対咬合をしめすもの(歯槽部性下顎前突であり、SNA-SNBディファレンスが正常範囲内)
  4. 上顎は正常より後退、下顎は正常より前突するもの

治療法は以下の通りです。

  1. 下顎枝垂直骨切り術、あるいは下顎枝矢状分割法
  2. 上顎LeFortⅠ型骨切り術
  3. 下顎前歯部歯槽骨切り術、あるいは歯列矯正
  4. 上下顎同時移動術(上顎LeFortⅠ型骨切り術+下顎枝矢状分割法あるいは下顎枝垂直骨切り術)が行われます。

 

当院での治療の流れ

下顎前突出症では、治療の概略(外科矯正or歯科矯正)を説明した後に、矯正歯科医と私が協議の上で治療方針を決定します。

サージェリーファーストの適応判断

手術前の歯列矯正を行わずに顎矯正手術を行い、顔貌の改善をはじめに達成する治療法をサージェリーファースト法といいます。当院を受診される多くの方が、

「長期間の歯列矯正は行いたくない」

「噛みあわせは気にしないけれど、顔貌を変えたい」

という要望を持っています。これにお応えするのがサージェリーファースト法です。

すべての患者様にこの方法が適応できるとは限りませんが、当院では90%以上の患者様が術前矯正を省略して手術を行っています。ただし、術後には歯科矯正、あるいは審美歯科的な治療法(セラミックなど)を検討します。

治療計画

治療計画

はじめに患者様の歯型の石膏模型(印象)を作成し、上下の前歯の被蓋関係、上下顎第一大臼歯の近遠心接触関係を確認します。次に模型を咬合器にセットアップして、模型上で下顎を後方に移動して手術後に咬合がどの程度安定するかを評価します。具体的には手術後に食事、会話などへの影響を検討します。

重要なのは、前歯の被蓋関係、臼歯部の接触関係です。術後に下顎前歯が上顎前歯の内側に位置(できれば接触)し、臼歯部での安定した咬合が得られれば良いわけです。当院の患者様の90%の患者様が術前矯正を行わずに手術を受けています。

顎矯正手術の計画

顎矯正手術の計画

顎矯正手術に際しては、CT撮影データより、セファロ分析、パノラマを描出して、顎部の詳細な形態分析を行い、術式の選択が行われ、治療方針が決定します。咬合模型(歯型)、下顎骨の3次元実体模型を作製し、手術計画が入念に行われます。

  1. 下顎前歯部のみの移動であれば分節骨切り術を適応します。
  2. 下後歯列全体を移動するのであれば、下顎枝垂直骨切り法、あるいは下顎枝矢状分割法のどちらかが選択されます。下歯槽神経の走行の深さ、術前の咬合状態から適応を判断しています。手術直後の顎間固定などの期間は異なりますが、どちらの手術法でも、結果としての顔貌形態には大きな差は出ません。
  3.  下歯槽神経が浅い場合にはSSROは適応しない

  4. 反対咬合がかなりひどい場合には,上顎をLe Fort1型骨切り術で前方移動して、下顎の後退量を緩和するTwo jaw surgery(上下顎セットバック)が計画されることもあります。下顎後退量として10mm以上必要な場合には、上顎L1を併用すべきです。

いずれも手術後より下顎全体が後退し、アゴの突出感が大きく改善されると同時に大きな小顔効果が得られます。サージェリーファースト法では、手術直後より患者様はコンプレックスから解放されることになります。

咬合の調整

サージェリーファーストが施行された場合には、術後の噛み合わせは必ずしも良好な状態とは言えません。手術後の咬合の治療に関しては、患者様には以下の3つの選択肢が与えられます。

①歯科矯正治療

咬合の改善を目的に術後早期から歯科矯正治療を始めます。矯正治療期間は、患者様の歯並びの状態により大きく異なりますが、通常は1~2年を要します。後療法としては、最も理にかなった方法です。

②審美歯科治療

長期に及ぶ歯科矯正は行いたくない場合には、審美歯科的にセラミック・クラウンによる咬合調整が可能です。特に虫歯が多く、銀歯などの被せが多い場合には、矯正治療よりもむしろセラミックなどによる咬合を調整するのに向いています。

➂何も行わない(放置)

最低限の歯の削合を行い、細かく咬合を調整して様子を見ることにします。その後に骨の癒合の安定(3~6ヶ月)を確認してから、噛み合わせの状況を考慮してあらためて咬合の治療方針を検討します。

手術前の咬合模型から手術後の嚙み合わせは予測できますので、手術前から後療法の方針は決定することは可能です。術前の歯並びにもよりますが、患者様の希望を最優先します。当院の患者様においては、手術直後から矯正歯科治療、審美歯科治療を開始する患者様ばかりではありません。

下顎前突(受け口):症例写真

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